ハロウィンだけどASブッパなので一撃でした

 前世では、一部繁華街のコスプレで有名だったハロウィンだが、トラ転してきたこちらの世界にもやはりハロウィンはあった。それこそ、私が育ったホウエンではそこまでではないのだが、ガラルともなると違うらしい。まあポケマスもハロウィンあったもんなあ、トウヤくんを毎日有償単発していた記憶しかないのですけど……。
『つーわけで、毎年ハロウィンは大変なんだよ。準備もそうなんだが、特にイベントの当日が大変なんだよ。そこで良かったらなんだが、手伝ってくれないか?』
「ナックルジムでも何かやるの?」
『まあな、慈善事業の一環で、孤児院を訪問してお菓子配るんだ』
「なるほどねえ」
 電話先の主、キバナくんとはガラルでジムチャレンジしていた頃、私がボーマンダを持っていたことをきっかけに仲良くなった。現在もその友人関係は続いており、仲良くさせてもらっている。そんな彼が困っているので、私も気にかかる。
『子供の数が多いから毎年人手が足りなくてなあ。こうやって方々に声をかけているんだ』
「わかった、ハロウィンは特にミクリの仕事もなかった気がするし、スケジュール確認したらまた連絡するよ。衣装とかはある?」
 ハロウィンだし、一応聞いておいたほうがいいだろう。なんか衣装持ってこいとか後で言われても大変だし。
「ああ、衣装ならこっちで用意しとくからサイズだけ教えてくれ。助かる!」
 キバナくんと話し終わって、一度切った後ミクリに確認したら、ミクリからも「行っておいで」と言われたので、キバナくんに承諾に電話を入れた。



 イベント当日、私の身長に合わせられた魔女のコスプレ衣装と、プラスチックでできたかぼちゃを渡された。中にお菓子が入っているらしい。こちらの世界のかぼちゃはゴーストポケモンの顔の形にくりぬかれることが多いのだが、受け取ったのはゲンガーのもののようだ。中を上から覗くと、カラーセロファンで包まれたお菓子がたくさん入っていた。かわいい上に、キラキラと光を当てると輝き、見ているだけでなんだかワクワクしてくる。
「トリックオアトリート、でこの中に手を突っ込んでお菓子を渡す。トリックオアバトル、でバトルして負けたらお菓子を渡してくれ」
 ポケマスのハロウィンイベント形式だった。
 マジかと思ったが、確かにジムリーダーやジムトレーナーとバトルをしたければ、本来はジムチャレンジするしかない。なるほど、ジムに所属する人間がバトルをするだけでもプレゼントになるのだろう。
「それ私もやるの?」
「何言ってるんだファイナル準優勝者、当たり前だろう。ナックルが求める基準を満たせるトレーナーは少ないからこそ、お前に頼んだんだ」
 なるほど、それで万年人手不足だったらしい。大変だ。私も隅っこでお菓子を配ればいいかと思っていたが、キバナくんに「結構メディア露出してるの忘れるなよ」と言われたあたり、ガラルではちょっとした有名人になってしまったようだ。そのことを前向きに考えるなら、実力が高いトレーナーとして子供たちには歓迎されるかもしれない。
「で、バトルはどのくらい本気でやっていいの?」
「そこは各々に任せてる。オレさまは負けないけど」
 子供たちを泣かせないために、ある程度のところで負けて自信を持たせるのか、ジムチャレンジの厳しさを教えるのかは個人に委ねてもらえるようだ。じゃあ私は本気でやろうかなあ、なんて大人気ないことを考えた。全部戦って、買ったらお菓子をあげたら解決だろう。

「トリックオアバトル!」
 そう言われて私も結構勝負を挑んでもらえた。流石にキバナくんの前には長蛇の列が出来ており、もはや子供に囲まれる巨人のようになっていたが、ジムトレーナーのリョウタさん曰く「毎年こうですよ。キバナさまは身動きが取れなくなるんです」とのこと。さすがガラルのトップジムリーダーである。その次はナックルジムのジムトレーナーとしてメディア露出が高い三人、そして私という順番で列は形成されていた。
 今回はナックルジムのお手伝いということで、パッチラゴンのサンデーを選んだのがよくなかったのだろう。ちょっとパッチラゴンの強さを甘く見ていたというか、そういえば、うちの子はでんげきくちばしで全部一発で倒せるように努力値やら調整していたんだったとか、廃人特有の申し訳なさを感じつつも、もちろん全勝。キバナくんも同じく大人気ないので全勝して「オレさまともう一度戦いたいなら、ジムチャレンジで待ってるぜ!」と激励していた。
「今年はありがとうな、おかげさまでだいぶ列の偏りが減ってたし、お菓子もスムーズに配れた」
「ううん、何か手伝えたならよかった」
 パッチラゴンで一撃で倒した後にお菓子を渡すだけの女になっていたが、本当に魔女じゃないだろうか。私の行動が未来ある子供たちのトラウマにならないことを祈るだけである。

「やっぱりサンデーはやりすぎたかなあ……でもドラゴンででんきってパッチラゴンしかいないし……」
 私はでんきタイプ使いなので、やっぱり大好きなでんきタイプも使いたい。でもナックルジムのお手伝いなのでドラゴンの方がいいだろうとパッチラゴンにしたのだがやりすぎた感は否めなかったと一人反省会をしていた。家に帰り着いてから、荷ほどきをしていてもちょっと考え込んでしまっていた。
「おかえり、アザレア。ハロウィンのお手伝いはどうだった?」
「ああ、それがですね」
 バトルを挑まれては一撃で返り討ちにする女になっていた旨を伝えると、ミクリは笑っていた。
「気にしすぎじゃないかな。それはむしろ君らしくて、良かったと私は思うよ」
「ありがとうございます……そう言ってもらえると気が紛れます」
 ミクリがこうだよ、と言ってくれたらそれだけで本当にそうだろうなあ、と思えてくる。ミクリがいうのだから違いない、と思ってしまうので私は単純である。
「トリックオアトリート」
「えっ」
「そういう日だろう?」
 そういえば昨日が30日だったので、今日がハロウィン本番だったか。あ〜失念していた。私の中のハロウィンは完全にガラルで終わっていたので、手持ちのお菓子といえばポケモン用のものしかない。
「おや、お菓子は持っていないのかな?」
「すみません……持ってないですね」
 普段からポケモンのお菓子しか持ち歩かないので失念していた。もう飛行機に乗って帰ってくる時点で私のハロウィンは終了していたのだ。申し訳ない。というか、この人と師弟になってから「トリックオアトリート」などという言葉は言ったことはあっても、言われたことがなかったのだけれど。甘いものが苦手なのに、なんで?? と思っていたら、ミクリが楽しそうに笑い始めた。
「じゃあこれを」
「何かの衣装ですか?」
 ハロウィンっぽい衣装だが、ドレスのようだ。ヘッドドレスにはツノがついていて、背中も丸く空いているだけでなく前も裾が短い。ドレスは可愛いけれど、何があってこの衣装は用意されたものなのだろう……と首を傾げてしまった。
「せっかくだから、ハロウィンのパーティーでもしようかと思って。と言っても、ポケモンたちがいると他の人までは呼べないから」
「二人だけでってことですね。わかりました!」
 ミクリはサプライズが好きな人だ。きっと、私がガラルから疲れて帰ってきているので、何かしら労いたかったのだろうと思う。
 そこから彼がもともと用意していたらしいハロウィンの飾りをポケモンたちと一緒に壁に貼り付けて、自宅でハロウィンのパーティーをした。ハロウィンらしいゴーストタイプのポケモンたちが描かれたアイシングクッキーの中にロトムがあったので激写したり、ポケモンたちに帽子をかぶせて写真を撮った。
 ミクリも吸血鬼のコスプレをして、ポケモンたちと一緒に写真を撮って楽しんでいたのだが……いや夫婦で結局やってることはポケモンの写真を撮ることなので似たもの同士だな……と思った。
 翌日、どうして今日はお菓子が昨日のようにお菓子がもらえないのか、としらたまがゴネて大変だった。

 今回はお試しイベントとして参加させていただきました!!その分の無配小説です。スペースありがとうございましたー!勉強になりました!
 せっかくのハロウィンですが、特に甘い要素もないいつもの感じになりましたので、せめて絵だけでも……と普段はミクリが止めそうな露出度の高い衣装を描いてみました。小説を読んでくださり、ありがとうございました。

Atorium

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