【しらたま視点】ハロウィンとしらたま
ハロウィン後日談です
明日はハロウィンというらしい。しらたまには難しいことはわからないが、アジーが外側が紫、内側がオレンジ色のマントと、同じ色合いのつばのひろい帽子を被せてくれた。これは魔女の格好というらしい。新しいおべべだろうか。マントがひらひらと舞うのが楽しくて、その場でくるくると回ってみた。でも転がってはならない。転がると、止まれなくなるからだ。
「しらたま、今日はみんなのお手伝いだよ。トリックオアトリートって言ったらお菓子が貰える日なんだよ」
しらたまはあまり頭の良くない、普通のトゲデマルである。けれども、お菓子という言葉には人一倍敏感であった。
「マ-!」
思い出した。確か、カロスに居たときも「トリックオアトリート」という言葉と共にみんながお菓子をくれたのだ。ポケモンたちもゴーストタイプのようなおべべを着て、声をかけるとお菓子を貰える。なるほど、その時と同じということらしい。
しらたまはあまり記憶力は良くないが、お菓子をもらえることに関してはよく覚えていたのである。
ハロウィン当日まで、たくさんの人たちが「あら、可愛いトゲデマルね!」とお菓子を分けてくれた。しらたまの短い手ではあまり沢山持てないので、後輩のライボルトにも持って貰った。
「マチュマチュ、マチュチュ!」
そう言うと、皆一様にお菓子をくれた。普段は、あまり沢山お菓子を貰うと怒ったり、謝ったり、心配するアジーがにこにこして見守るだけだったので、しらたまはたくさんのお菓子を貰うことが出来た。
このおべべは魔法のおべべだ。みんながお菓子をくれるのだ。
しらたまはワクワクしながら、たくさんの人からどっさりとお菓子を分けて貰った。
「マチュマチュ、マチュチュ!」
このおべべを着ていたら、普段は食べ過ぎると怒ってくるミクリも笑顔でお菓子をくれた。幸せだった。
明日もこのおべべを着て、みんなからお菓子を貰おう、と浅はかなトゲデマルは考えていた。
翌日、アジーが魔女のおべべを着せてくれなかったので、おかしいと思いつつもしらたまはおべべを持ってきて「マチュマチュ」と言った。
「しらたま、今日もそれ着るの?」
「マチュ!」
「うーん気に入ったのかな?可愛いから、いいけど……」
そう言ってアジーはおべべを着せてくれた。
「マチュマチュ、マチュチュ!」
「ん? もうハロウィンじゃないから、お菓子あげないよ?」
「マッ!?」
「ハロウィンは昨日までだったの。だからもう、お菓子はないよ」
しらたまには難しいことは分からぬ。しらたまはよく食べてよく寝て、たくさん遊んで暮らしてきた。そのため、ハロウィンじゃないとお菓子をくれない理由が分からぬ。なぜ、今日はハロウィンではないのかが分からぬ。
しかし、元々アジーは一番しらたまへのお菓子については厳しいのだ。すぐに「もう食べ過ぎだよ」と言って止めてくる。
しらたまは諦めなかった。アジーがダメなら、まだアジーより甘いミクリに頼めば良い。
「マチュマチュ、マチュチュ!」
「おや。その衣装を気に入ったのかな?」
「マチュ!」
そうにっこり笑って答えると、ミクリは嬉しそうに笑った。
これはいけるのではないか。
「マチュ?」
再度催促をしたところ、ミクリが何かに気がついたように「ああ」と言った。
「しらたま、ハロウィンは昨日までだったんだ。だから、もうその格好をしていても、お菓子は貰えないんだよ」
「マーー!?」
「昨日、たくさんお菓子をあげたでしょう。もうそれでおしまい」
しらたまには難しいことはわからぬ。けれども、お菓子が貰えないということに関しても人一倍敏感であった。しらたまは激怒した。
しらたまは単純なトゲデマルであったため、その足でまたアジーの所へ走って行った。
「マチュチュ、マチュチュ! マチュ、マチュマチュ。マチュマチュ、マチュチュ!?」
「だから、昨日まではハロウィンだったから、その格好をしていたらお菓子が貰えたの」
「マチュチュ?!」
「今日はもうだめなんだよ」
「マチュ、マチュマチュ、マチュチュ!」
一日くらい延期しても良いではないか、しらたまはそう主張したが、聞き入れてはもらえなかった。
しらたまにはハロウィンは分からぬ。
最後の死力を尽くしてわがままをいったが、聞き入れてもらえなかったため、しらたまはしょげた。
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