いちゃいちゃしてるだけSS


「それで、ポケモンたちが生態として……」
 私が婚約者の前で意気揚々と話していたら、彼は頬にキスをした。
「ちょっと、聞いていますか?」
「もちろん、聞いているとも。君の言葉はきちんとね」
 そうして、もう一度聞こえてきたリップ音に思わずため息をこぼしたところ、彼はくすくすと笑い始めた。
 ……師弟なだけだった頃はこんなことは無かった。せいぜい指のはらで唇をなぞられたり、頬に手を添えられたり、髪をなでてキスされるくらいだったきがする。
「おや、何かご不満が? ああ」
 自問自答しないで欲しい、と思っていたら唇に柔らかいものが触れて固まる。ミクリに顎を掴まれて、彼の方を向くにようにされたのだ。
 楽しむように軽くはまれた後、彼は上機嫌で笑っていた。
「唇じゃないから、不満だったんだよね?」
「はあ」
「ごめんね、察しの悪い男で」
 何に対して謝っているのだろう、この綺麗な人は。
 うーん、と悩む振りをした後、ミクリは私を見てにやりと笑った。
「いやだったかな、キス」
「いやじゃないですよ」
「じゃあ良かった」
 この人はいつもこれだなあ、と思いながらも呆れていたら、ミクリに深く口づけられた。
 彼は舌を口の中に入れて、私の舌を捕まえる。その上、彼の手は私の後頭部と腰を掴んでいるため、逃げられない。
 長いキスの後に、彼がようやく離してくれて、息を吸った。ぷは、と呼吸を再開したはいいが、力が完全に入らない。やられたな、と頭の片隅で理解した。
 何が酷かったかというと、彼はその後「お楽しみはとっておかないといけないんだったな」と言って、残りの仕事を片付けを始めたところだったりする。

Atorium

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