【亀甲/一期SS】背もたれのある椅子

2018/8/26

「ご主人様! 何か僕に手伝えることはないかな!? ご主人様の命ならば、僕は机でも椅子でもお馬さんにでもなるとも!」
 執務室にババーンと現れたのは亀甲だ。
 ちらと目をやり亀甲だなあとすぐに流してしまう近侍の一期一振の対応を私はしっかり見ていた。
 黙々と作業を進めたい彼にとって、執務中に突然乱入してくる刀たちは、弟たちを除きあまり関心がないようだ。なるほどお仕事モードである。
 まして相手は亀甲なので放置しても亀甲は気に留めまいと判断したのだろう。
 一期の対応は彼の職務の観点から見てベストだが、さすがに主である私がそうするのは良心が痛かった。
 亀甲は放置されてもそれはそれで「放置プレイだね!」と喜ぶだろうが、私がいやなので少し構うことにした。
「うーん、亀甲、頼むからお馬さんだけはやめてほしいかなあ」
「んんんっ? ということは……」
「ちょうど背もたれがある座椅子を長谷部に貸しだしててさあ……亀甲、ここにすわって。そうそう」
「こうかい?」
 そうして私は亀甲と背中合わせになる。
 私は背を亀甲に預け、少しくつろいだ。
 本人希望の椅子だし、ほんの少しの間なら良かろう。傍目から見れば背中合わせになっている仲よしさんといったところだ、ヤバイ光景には見えないはずだ。
「ああ……っ! ご主人様! まさか、僕の希望通り僕を椅子にしてくれるなんて! ……ちょっと僕が考えていたのとは違うけど、これはこれで……」
「椅子はそんなにお喋りじゃ無いと思うなあ」
 と私も亀甲のノリに便乗した。
 この対応は間違っていただろうか、周囲からみてヤバくないだろうか……と一期一振に視線をやると、彼はふわりと笑ってから書類に目を戻す。
 なるほどお仕事モードである。

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