【しらたま視点】年末年始としらたま
大晦日に限らず、イベント毎には美味しい食事がつきものである。
例えばこのしらたまというトゲデマル、大晦日は蕎麦を食べるものだと理解しているのだ。
「今年は蕎麦を打つところから作ってみようと思うんだ」
ミクリの言葉に、しらたまは楽しみだなあ、と笑った。
ミクリは料理が上手だ。ポケモンフーズにポロック、お菓子もそうだが、どんな料理を作らせても大抵美味しい。アジーはそんなミクリのことを「とにかく器用な人」と言っていた。
「ミクリは蕎麦を打ったことがあるんですか?」
しらたまの友人であり、トレーナーであるアジーはそう不思議そうに尋ねた。
「いや、あんまり経験はないな」
「えっ」
「せっかくだし、今年最後のチャレンジ、というのも趣深いと思わないかい?」
彼は手を広げてそう言った。
「ま、まあ。貴方がやると仰るなら、うまくいくのでしょうけれど」
アジーが足元にいたしらたまに「ねえ?」と同意を求めたので、よくわからないまま、しらたまは「マチュ!」と元気に返事をした。蕎麦を打つというのが何なのかよくわからなかった。
しらたまは、のんびりとしたトゲデマルである。しかし、食べ物に関しては人一倍敏感であった。
「ライライ?」
「ああ、メープルか。今から蕎麦を打つんだよ。だから、甘いものはなしだ」
メープル、と呼ばれたのはしらたまの後輩で、アローラライチュウと呼ばれているポケモンだ。甘いものが大好きで、ピチューだった頃こっそりメープルシロップを飲んでいたため、そこから名付けられた。
ミクリがキッチンに入ったので、メープルはミクリが何か甘いものを作るのではないかと覗きに来たらしい。
「ライ?」
「お蕎麦を作るんだよ。年越し蕎麦」
そこまで説明をすると、メープルは目を輝かせてわかったと大きく頷いた。甘いものに関わらず、メープルは食べることが大好きなライチュウだ。
「ライライ! ライ?」
「マチュマチュ!」
台所には入るなと言われているので、入り口のところでそう訴えると、ミクリはう〜んと悩んだように考え始めた。
「もしかして、蕎麦を作るのを、手伝ってくれるのかな?」
「ライ!」
「マチュ!」
「そうか、ありがとう。じゃあお願いしようかな」
……しらたまはあまり頭のよくないトゲデマルである。しかし、食べ物に関しては嘘のように頭が働くトゲデマルでもあった。
しらたまは考えたのだ。
これはチャンスだ。自分がお手伝いをすれば、蕎麦をたくさん食べられる……!!
そう、これは完璧な作戦である。
「まずはこうやって、混ぜていくんだよ」
「ライライ!」
「ありがとうメープル。でもね、ここは大切な作業だから私に任せて欲しいんだ。あとでまた君たちの協力を頼むからね」
そう言ってからミクリは大きな器の中で、粉に水を加えては何度も何度も慎重に混ぜていった。水を加えていくことで、粉が塊になり……ミクリが少しずつ蕎麦を作っていく様子をしらたまとメープルはじっと見つめていた。
「よし、これを袋に入れて……」
ミクリが台所から出て行こうとしたところで、少し振り向いて「ついておいで」と声をかけてくれた。
「マチュ!」
「ライ!」
「うん、いい調子」
ミクリに言われて、蕎麦の上で足を動かして踏む。なんでも、ある程度踏むことで蕎麦が美味しくなるらしい。しらたまがたまに蕎麦の上でジャンプをすると、メープルも真似をしてジャンプをしていた。その様子を見たパチリスやエモンガもやってきて、みんなで蕎麦の上で歩いたり、ジャンプをした。それぞれのポケモンたちの声が、元気のいい掛け合いとして響いた後、ミクリに「そろそろ良さそうだね」と止められた。
「わ〜〜、美味しいですね! ミクリ、蕎麦美味しいです」
「ありがとう、しらたまやメープル、パチリスにエモンガも手伝ってくれたんだよ。だから尚更美味しいと思う……そうまさにグロリアス!!」
「えっ待ってください、どうしてその動画ないんです!!? 動画は!? お手伝いしてる私のポケモンたちの可愛い動画は!?」
なんて二人が話しているうちに、しらたまは自分の分のポケモンフーズを食べ終わったため、アジーの膝の上に乗った。
「マチュ!」
「あっしらたま、食べ終わったんだね。そばも食べたいんでしょ?」
「マチュ!」
「ちょっと待ってね〜」
そうして、しらたまはお手伝いの成果としてちょっぴり多めの蕎麦をもらった。これを食べたら、新年というものが来るらしい。新年が来れば、おせちとお餅が食べられる。
しらたまの年末年始は、まだまだ終わらない。
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